第96回海外在住者の相続手続きについて放送日:2020.03.05

  • 【相続人が海外に在住】
    登場人物:夫(死亡)、妻(質問者)息子(海外在住)
    財産内訳:自宅(3000万円)、預貯金(1000万円)
  • Q.
    先日夫が亡くなりました。
    子どもは二人いるのですが、一人は海外で暮らしています。
    そのため、印鑑証明書や住民票が取得できません。
    この場合の相続手続きはどうなるのでしょうか。
  • A.
    相続人全員(海外にいる相続人も含めて)で遺産分割が整えば、遺産分割協議書を作成することになります。この遣産分割協議書には、相続人全員の署名・実印での押印、そして印鑑証明書の添付が必要です。しかし、台湾や韓国を除いて、日本以外の国では印鑑証明書や住民票の制度が存在しません。つまり、海外に住んでいる相続人は、遣産分割協議書に実印を押して印鑑証明書を添付するということができないことになります。このままでは、相続財産の中に不動産があっても、その登記を変更する手続(法務局)ができません。
    この場合、海外では、実印に代わって署名(サイン)で行いますので、海外にいる相続人は、遺産分割協議書に署名(サイン)を行うことで代替え手段を使います。そして、印鑑証明書の代わり、日本領事館等の在外公館に出向いて遺産分割協議書に相続人が署名した旨の証明(サイン証明)をもらってきて、このサイン証明を遺産分割協議書に添付することで対応します。法務局もこの方法での登記申請を認めています。
    また、相続財産の中に不動産がある場合には、法務局に対して相続登記を行いますが、この登記申請には住民票が必要になります。日本国内にいる相続人の住所を証明するには、戸籍の附票または住民票を使えばいいですが、在外邦人の場合には、国内に本籍が残っていたとしても、戸籍の附票にも住民票にも、居住する外国の住所までは記載されていません。そこで、住所を証明する書類として、「在留証明書」というものが必要になります。この在留証明書は、現地の日本領事館にパスポートや運転免許証といった現住所にいつから居住しているのかを証明できる書類を提示することによって申請・取得することができます。