第413回もしも指定した相続人が先に亡くなってしまったら?放送日:2026.3.11
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大木さん:皆さん、こんにちは。大木文香です。今週も相続のプロ、絹川先生と相続に関する知識を一緒に学んでいきましょう。先生、今月もよろしくお願いいたします。
絹川先生:大木さん、こちらこそよろしくお願いいたします。今日も「知っておくと安心できる相続」を、できるだけやさしい言葉でお伝えしますね。
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- 【事例】
- 父が亡くなり、自筆証書遺言が出てきました。家庭裁判所で検認してもらったところ、形式的には問題ありませんでした。ただ、「長女に財産をすべて相続する」と書いてあったのに、長女は半年前に事故で亡くなっているんです。この場合、どういう遺産分割になるのでしょうか?まさか、甥にすべて行くわけじゃないですよね?
家族構成は、次女(相談者)、三女(妹)、甥(長女の子)です。財産は、不動産1,800万円、預貯金1,000万円です。
- 1.結論:遺言自体は「無効」ではないが、その部分は実現できない
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絹川先生:結論から言うと、遺言が「全部無効」になるわけではありません。ただし今回の遺言の内容は、**指定された長女が、すでに亡くなっているため“その指定は実現できない”**状態です。
大木さん:えっ、形式がOKなら、そのまま長女の子=甥に行くんじゃないんですか?
絹川先生:そこが誤解されやすいところです。遺言に、例えば「長女が先に亡くなっていたら、甥に相続させる」などの**“次の受け取り先”の指定**が書かれていない限り、基本は自動的に甥へ…とはなりません。
- 2.では、遺産分割はどうなる?原則は「法定相続」に戻る
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大木さん:じゃあ、この場合は誰が相続するんですか?
絹川先生:今回の前提だと、相続は原則として法定相続(法律の決まり通り)に戻ります。つまり、お父様の子どもが相続人になります。ただ、長女はすでに亡くなっている。ここで大事な言葉が出ます。
**「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」**です。
大木さん:代襲相続…なんか聞いたことある気がします
絹川先生:簡単に言うと、**本来相続するはずだった人(この場合は長女)が先に亡くなっていたら、その子(甥)が“代わりに相続人になる”**仕組みです。
なので今回、相続人は
・次女、三女、甥(長女の子が代襲)この3人になります。
大木さん:ということは…甥も相続人なんですね。
絹川先生:はい。だから「甥に全部行くか?」という質問の答えは、全部ではなく、長女の取り分を甥が引き継ぐイメージです。
- 3.相続分はどうなる?(数字で整理)
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大木さん:具体的な割合はどうなりますか?
絹川先生:お父様の子が3人いた、という扱いになります。
長女の取り分を甥が引き継ぐので、相続分は原則
・次女:1/3
・三女:1/3
・甥(長女の代襲):1/3
です。
財産が合計で、1,800万円+1,000万円=2,800万円とすると、単純計算では
・それぞれ約933万円ずつ相当(2,800万円 ÷ 3)
という目安になります。
大木さん:なるほど、甥に全部ではない、と。
- 4.不動産はどうやって分ける?現実的な3つの方法
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大木さん:でも不動産が1,800万円って、きれいに3等分できないですよね…。
絹川先生:おっしゃる通り。不動産は分け方が難しいので、現実的には次の3つの方法が多いです。
方法①:売って現金で分ける(換価分割)
不動産を売却して、現金にしてから3等分する方法。公平で分かりやすい一方、売却まで時間がかかることがあります。
方法②:誰かが不動産をもらい、他の人に現金で調整(代償分割)
例えば次女が不動産を取得し、三女と甥には預貯金や手元資金で“差額調整”して支払う。家を残したいときに使われます。
方法③:共有にする(共有分割)
3人で持ち分を1/3ずつにして共有にする。ただし共有は、後々の売却・修繕・管理で意見が割れやすく、おすすめは慎重です。
大木さん:共有はあとで揉めやすい、ってよく聞きます。
絹川先生:はい。特に甥が若い場合、将来のライフステージで判断が変わりやすく、長期的な火種になりやすいです。
- 5.今回の注意点:遺言があっても「想定外」が起きる
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大木さん:今回、遺言があったのに、結局は法定相続に戻るんですね…。
絹川先生:そうなんです。注意点は主に2つです。
注意点①:「受け取る人が先に亡くなる」リスク
遺言は“人”を指定するので、その人が先に亡くなる可能性は常にあります。
注意点②:遺言の文言が「相続」になっている点
今回「長女に財産をすべて相続する」と書いてありますが、
厳密には、相続人以外に渡すなら「遺贈」と書くなど、言葉の整理も大切です。
(今回は長女が子なので相続人ではありますが、文章の作り方で誤解が減ります。)
- 6.事前対策:こう書いておけば揉めにくい(実務のコツ)
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大木さん:じゃあ、生前にどんな対策ができたんですか?
絹川先生:対策は大きく3つです。
対策①:予備的な指定を書く(いちばん重要)
「長女に相続させる。もし長女が先に亡くなっていた場合は、甥に相続させる」こういう“次の受け取り先”をセットで書く。これで混乱が減ります。
対策②:公正証書遺言にする
自筆でも作れますが、内容の不備や解釈違いが起きやすい。公正証書なら、専門家のチェックが入るためトラブル予防になります。
対策③:不動産の分け方まで書く or 資金を用意する
「不動産は売却して分ける」
「不動産は次女、代わりに預金は三女と甥」など、分け方の方針を書く。
また、代償分割を想定するなら、差額を払える資金(保険など)を用意するのも有効です。
- まとめ
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大木さん:先生、今日のまとめをお願いします!
絹川先生:はい、まとめです。
・指定した相続人が先に亡くなっていた場合、遺言が全部無効になるわけではない
・ただし、その指定は実現できず、原則は法定相続に戻る
・今回は 代襲相続により、甥が長女の取り分を引き継ぎ、相続分は原則次女1/3、三女1/3、甥1/3
・不動産は「売却」「代償」「共有」の選択肢があり、共有は慎重に
・事前対策の決め手は “予備的な指定(もし先に亡くなったら誰へ)”を書くことと公正証書遺言
- エンディング
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大木さん:遺言があっても、想定外が起きることがあるんですね。
「もしもの時の次の指定」まで書くのが大事、と。
絹川先生、ありがとうございました!
絹川先生:ありがとうございました。遺言は“書いたら終わり”ではなく、“想定外に備えて完成”です。早めの見直しも大切にしていきましょう。
大木さん:皆さん、次回もお楽しみに。それでは、また来週!
ラジオ番組
教えて絹川先生!
文香の知らない相続の世界
パーソナリティと相続について楽しく学ぶラジオ番組です。
身近な事例を元に、相続にまつわるトラブルや
疑問を分かりやすく解説しています。
| 放送局 |
北陸放送 |
| タイトル |
「教えて絹川先生!文香の知らない相続の世界」 |
| 放送時間 |
毎週木曜日15:20~ |
| 出演 |
絹川忠宏、大木文香 |