第412回疎遠な兄弟ではなく、お世話になった甥・姪に遺す方法放送日:2026.3.4
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大木さん:皆さん、こんにちは。大木文香です。今週も相続のプロ、絹川先生と相続に関する知識を一緒に学んでいきましょう。先生、今月もよろしくお願いいたします。
絹川先生:大木さん、こちらこそよろしくお願いいたします。今日も「知っておくと安心できる相続」を、できるだけやさしい言葉でお伝えしますね。
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- 【事例】
- 私は独身なので、将来自分に万一のことがあった場合は、兄弟に財産が相続されると聞きました。ただ、今後私の面倒を見てもらうことになっている甥と姪がいるので、その2人にできれば遺したいんです。兄とは、親の死後20年近く疎遠で、財産を遺すことは考えていません。でも「遺留分」というものがあると聞いて、どうしたらいいか悩んでいます。家族構成は、本人は独身。法定相続人は兄弟(兄、弟)。遺したいのは、弟さんの子、つまり甥・姪です。先生、こういう希望って、法律的に可能しょうか?
- 結論:可能。ただし“遺言”が必須
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絹川先生:結論から言うと、可能です。そして今回のケースでは、いちばん大事なのは 「遺言書(ゆいごんしょ)」を作ること です。
大木さん:遺言がないと、兄弟にいってしまうんですか?
絹川先生:そうですね。遺言がないと、法律のルール通りに分けることになります。この場合、配偶者も子も親もいない前提だと、基本的に兄弟が相続人になります。だから、甥・姪に遺したいなら、遺言で「この人に渡します」と指定する必要があります。
- 「遺留分」はどうなる?
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大木さん:それで気になっているのが「遺留分」です。兄に遺留分があるなら、結局もめますよね…。
絹川先生:ここは安心ポイントです。兄弟には、遺留分はありません。
大木さん:えっ、兄弟って遺留分ないんですか?
絹川先生:はい。遺留分というのは、簡単に言うと「最低限は取り分が守られる権利」なんですが、対象になるのは主に配偶者・子・親です。兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言で甥・姪に全て遺す内容でも、遺留分の請求は基本的に起きません。
大木さん:それはかなり安心ですね。
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具体的な手段①:遺言で「遺贈」する
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絹川先生:では具体策です。まず王道はこれです。遺言で、甥・姪に「遺贈(いぞう)」する。遺贈は、相続人以外に財産を渡す方法、とイメージしてください。
大木さん:遺言に「甥に○○を、姪に○○を」って書けばいいんですね。
絹川先生:
そうです。さらに実務的には、次の2つが重要です。
・公正証書遺言(公証役場で作る。失くしにくく、トラブルになりにくい)
・**遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)**を指定(手続きを進める責任者)
甥・姪に確実に渡すには、「作っただけ」で終わらず、手続きを実行できる形にしておくのがポイントです。
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具体的な手段②:生命保険を活用する(手続きがスムーズ)
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大木さん:遺言以外にも方法はありますか?
絹川先生:あります。次に分かりやすいのは生命保険です。保険金の受取人を甥・姪に指定しておくと、亡くなった後に比較的スムーズに渡せることが多いです。
大木さん:遺産分けの話し合いをしなくても?
絹川先生:保険金は、性質としては「受取人の固有の財産」と扱われるケースが多く、相続手続きより早く受け取れることもあります。「当面の生活費」や「お礼の気持ち」を形にするのに向いていますね。
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具体的な手段③:死因贈与・信託・養子縁組(状況により検討)
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大木さん:ほかにもありますか?
絹川先生:状況次第ですが、代表例を3つだけ紹介します。
1. 死因贈与(しいんぞうよ)
「私が亡くなったらこの財産を渡す」という契約。遺言に似ていますが、契約なので作り方に注意が必要です。
2. 信託(しんたく)
「管理を任せて、決めた目的で渡す」仕組み。
たとえば「甥・姪が〇歳になったら渡す」「介護してくれた分を毎月渡す」など、条件設計ができます。
3. 養子縁組
甥・姪を養子にすると法定相続人になり、立場が強くなります。
ただし家族関係への影響が大きいので、メリット・デメリットを整理して慎重に判断です。
- 円満にするための注意点(ここが一番大事)
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大木さん:法律的にできても、揉めずに進めたいです。注意点はありますか?
絹川先生:はい、ここが肝です。ポイントは大きく3つ。
①遺言は“曖昧に書かない”
「財産を全部甥と姪に」だけだと、財産の特定が難しいことがあります。不動産なら地番、預金なら金融機関名など、具体的に書くのが大切です。
②付言事項(ふげんじこう)で“気持ち”を添える
付言事項は、法的拘束力はないけれど、すごく効きます。たとえば、「長年疎遠だった兄には申し訳ないが、今後の生活を支えてくれる甥・姪に感謝を込めて遺したい」いうように、理由を書いておく。これだけで感情の火種が減ります。
③税金と手続きの現実も押さえる
甥・姪に遺す場合、相続税の計算上、配偶者や子より不利になることがあり、**相続税が2割増し(いわゆる“2割加算”)**になるケースがあります。なので、財産額によっては納税資金(払うためのお金)も一緒に設計が必要です。生命保険で納税資金を準備する、などが有効ですね。
大木さん:なるほど…「遺言さえ書けばOK」じゃなくて、書き方と周辺の準備が大切なんですね。
絹川先生:その通りです。今回のケースは、兄弟に遺留分がない分、設計はしやすい。でも、だからこそ「気持ちの説明」と「実務の段取り」で、円満さが決まります。
- まとめ
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大木さん:先生、今日のまとめをお願いします!
絹川先生:はい、まとめです。
・甥・姪に遺すことは可能。ただし 遺言が必須
・兄弟には遺留分がないので、遺留分トラブルは基本的に心配しすぎなくてOK
・手段は、まず公正証書遺言+遺言執行者が王道
・追加で 生命保険、必要に応じて死因贈与・信託・養子縁組を検討
・円満のコツは具体的な書き方・付言事項・税金(納税資金)の3点
- エンディング
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大木さん:今週も勉強になりました!
「疎遠な兄弟ではなく、お世話になった甥・姪に遺す」――感情も絡むテーマですが、準備で変わるんですね。絹川先生、ありがとうございました!
絹川先生:ありがとうございました。相続は「想いを形にする準備」です。早めに整えて、安心につなげていきましょう。
大木さん:皆さん、次回もお楽しみに。それでは、また来週!
ラジオ番組
教えて絹川先生!
文香の知らない相続の世界
パーソナリティと相続について楽しく学ぶラジオ番組です。
身近な事例を元に、相続にまつわるトラブルや
疑問を分かりやすく解説しています。
| 放送局 |
北陸放送 |
| タイトル |
「教えて絹川先生!文香の知らない相続の世界」 |
| 放送時間 |
毎週木曜日15:20~ |
| 出演 |
絹川忠宏、大木文香 |