第358回相続人は誰か、を確定させたら「誰に何をどれだけ」相続させるのか、考えておきましょう。そのために「財産の棚卸」が重要です。放送日:2025.2.20
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大木さん:この番組ではちょっと難しい相続について、絹川先生に教えていただきます。
先週は、相続トラブルを防ぐために、「相続人はだれか」、生前から家族間で話し合って共有しておきましょう、というお話をお聞きしました。
絹川先生:そうですね、法定相続通りであればわかりやすいのですが、例えば被相続人の意思で法定相続以外の方法で財産を引き継がせたい場合には、遺言書作成などの方法をとることができます。ただ、事前にその意思を残された家族へ共有しておかないとトラブルを招く、というお話をしました。
今週は、その相続人に「どの財産」を相続するかを明らかにするために作る「財産目録」についてお話します。
大木さん:財産目録、というと、つまり被相続人の財産をまとめたリストですか?
絹川先生:その通りです。「財産目録」は財産を一覧にしたリストです。まとめてあると相続人の負担が軽くなるだけでなく、相続人同士がもめることも防ぐことができます。現預金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産についても記載することとなっています。
大木さん:具体的には何を書けば良いですか?例えば「アパート」「自宅」などでしょうか
絹川先生:
財産目録には、相続財産の名称だけでなく、種類、数量、所在、価額など特定できるような情報を書き出します。すべての財産を洗い出し、細かく記載することで、相続財産の内容を把握できるのです。財産目録の作成は義務ではありませんが、多くのメリットがあります。遺言書の作成一つにしても「長男〇〇に土地Aを相続させる」「友人△△に有価証券Bを遺贈する」でも問題ないのです。しかし、遺言書のあるなしに関係なく、財産目録はつくっておいたほうがよいでしょう。相続とは「財産の一切合切を引き継ぐこと」だからです。
遺言書のない財産はすべて、相続人が遺産分割協議でどう分けるかを話し合って決めます。ここで財産の状況全体を相続人それぞれが確認できなければ、話し合いすらできません。「隠している財産があるのではないか?」という疑いや争いが生じる可能性もあります。
また、相続税の申告書でも必要です。正味の遺産総額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を上回ったら、相続税の申告が必要です。この相続税の申告書には、プラスの財産とマイナスの財産をもれなく記載する必要があります。つまり、財産目録があれば、遺産分割協議を進めやすくなり、かつ相続人の相続の作業の負担を軽くすることができるのです。
大木さん:財産がそこまで多くないから自分で書けそうだけど少し不安・・・複数の不動産があって大変・・・など、お困りの際は是非先生のような専門家に相談するのが良いですね。