第297回【遺言書ってどんなもの?】知識が無いままに遺言書を書くと逆にトラブルにつながることも。放送日:2023.12.28

  • 大木さん:この番組では毎月「ちょっと難しい」相続のことについて教えていただいていますが、今月は「相続」の話をするうえで欠かせない「遺言」について教えていただきたいと思います。

    絹川先生:これまで相続トラブルを避けるうえで「遺言書」は有効、という話を何度もしてきましたね。
    大木さん:そうですね、「遺言書を書いておけば・・・」というトラブル事例をよくご紹介してきました。
    絹川先生:たとえば、不動産が1つしかないのに、相続人は複数人いたり、相続人間で公平に分けることが難しかったり…さまざまなケースを「遺言書を書く」ことで解決できるとお伝えしていました。
    しかし、反対にその「遺言書」がトラブルのもとになるケースもあるんです。

    大木さん:そうなんですか?それは驚きました、
    絹川先生:もちろん、しっかりと要件に沿って作成すればほとんどの場合トラブルにはなりません。しかし、知識が無いままに遺言書を書いてしまうと…
    大木さん:なるほど、ではどんな遺言書がトラブルになりやすいのでしょうか。

    絹川先生:まず「遺言内容があいまい」なケースです。たとえば、「能登にある土地は長女である文香に」という遺言書だった場合、対象物件の特定が不十分として遺言の当該部分に効力が認められなかったり、登記申請が拒否されたりする可能性があります。「何となく伝わるだろう」「あの子ならわかってくれる」という気持ちだけであいまいな遺言を作ると、あとで大変な問題になることがあります。

    大木さん:たしかに、親の持っている土地や不動産だったり、すべて把握できないですもんね。
    絹川先生:そうなんです、また「遺留分減殺請求」が起きるというケースもあります。大木さん、遺留分について覚えていますか?

    大木さん:法定相続人が最低もらえる遺産のこと

    絹川先生:遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。 亡くなった方(被相続人)は、自身の財産の行方を遺言により自由に定めることができますが、被相続人の遺族の生活の保障のために一定の制約があるんです。
    つまり、最低限保障されている「遺留分」を無視した遺言書を書いてしまうと「遺留分減殺請求」が起きてトラブルに発展することがあります。

    たとえば、「財産は全て長男に相続させる。」という遺言は昔から割と広く用いられてきましたが、他の相続人は何ももらえないことになるため、遺留分侵害額請求による紛争勃発のリスクがあるんです。

    大木さん:もし自分で遺言書を書く場合には「遺留分」についても気を付ける必要がありそうですね。

    絹川先生:そうですね、遺留分侵害額請求をしたり遺言無効確認訴訟を行う場合、時間が非常にかかるので早期解決は難しくなります。有効な遺言書を残すために、コストをかけてでも公正証書遺言を書く、もしくは自筆証書遺言でも家族間で事前に話し合い「共通認識」をもっておくことが大切です。