第265回【事例で学ぶ不動産相続】生前贈与された土地の価値がアップした場合 生前贈与された土地は「特別受益」とみなされ、特別受益の評価時点は「相続開始時」となります。放送日:2023.5.18

  • 家族構成 / 父親、母親(すでに死亡)、長男、長女(Aさん)
  • 【事例】
    父親が亡くなり、Aさんの知らないところで兄に土地が贈与されていたことが分かりました。
    10年前は1000万円だったその土地は、今から数年前に近くに駅ができたことで評価額が大幅に上がり2000万円までになっています。兄はもらった時点での価格で評価されると主張しています。
  • 【大木さんに質問】
    今回の「生前に贈与された土地」はいつの時点での評価額が認められるでしょうか。

    →長男が父親から生前に贈与された土地は「特別受益」と見なされます。特別受益の評価時点は「相続開始時」のため、土地は2000万円として評価されることになります。

    相続人が被相続人から生前に受けた贈与のうち、一定のものを「特別受益」と言います。特別受益の典型例は、本件のように居住用の土地の生前贈与を受けたケースです。

    さて、特別受益と評価される贈与対象物の金銭評価は、いつの時点になのでしょうか。特別受益の評価時点については、贈与を受けた当時ではなく「相続開始時」とされ、相続開始時の当該土地の価値を基準に具体的な相続分を検討することになります。今回のケースであれば、土地は2000万円として評価されることになります。

    なお、相続人間の公平を図るために、特別受益を受けた相続人がいる場合は相続分の前渡しとみて、特別受益と評価された贈与は、相続財産に加算されて相続分は算定されます。よって、特別受益を受けた相続人が取得する遺産は、特別受益と評価された贈与分が控除されることになります。

    今回のケースであれば、土地の評価時点が相続開始時と分かった場合、贈与を受けた土地の評価額でトラブルになることが考えられるでしょう。

    特別受益を受けた長男はできれば安く、特別受益を受けてないAさんはできるだけ高く評価してほしいと考えるからです。土地の評価額によって兄弟の持分が減ったり増えたり大きく影響するため、争いはヒートアップしてしまいます。


    評価額が兄弟間で決まらない場合には、裁判所において鑑定を行い、その評価額によることとなります。しかし鑑定人の費用は物件にもよりますが、通常の戸建てでも50万円程度かかることがあります。さらに費用は相続人で負担しなければなりません。鑑定を依頼するだけでも手間とお金の負担額が大きいため、最終的にはお互いに依頼した査定額を持ち寄り、話し合いで調整するケースがほとんどです。