第264回【事例で学ぶ不動産相続】被相続人所有のアパートを管理している相続人がいる場合 被相続人の財産は、相続人が決まるまでの期間、共有の財産となります。アパート管理で得られた収益も、共有の財産となるでしょう。放送日:2023.5.11

  • 家族構成 / 父(被相続人)、母親(すでに死亡)、長男(Bさん)、次男、三男
  • 【事例】
    Bさんは、父の生前に父所有のアパートを管理して生計をたてていました。
    今回父が亡くなり、弟二人から「賃料も相続財産だから分け前をほしい」と声があがりました。
  • 【大木さんに質問】
    Bさんがアパート経営をして得た賃料でも、弟二人に支払い義務があるでしょうか。

    →父親の財産は子どもたちの共有財産となるため、相続人が決まるまでの期間、長男は兄弟に収益の3分の1ずつを支払う義務が生じます。ただし分け方は話し合いで調整可能です。


    あくまで所有者は亡くなった父親であるため、遺言書がない場合、父親の遺産であるアパートは、長男、次男及び三男3人の共有(持分3分の1ずつ)となります。そして、アパートを共有している人は、その収益を受け取る権利があります。したがって、長男は、次男及び三男に対して、それぞれアパートの収益(売上から経費を控除した金額)の3分の1ずつを支払う義務が生じます。ただし、どう分けるかは兄弟間の話し合いにもよりますので、法定相続分と異なる分け方も可能です。

    父親の遺産であるアパートは、アパートを相続する相続人が確定するまでの間、兄弟で共有することとなります。仮に、長男が「アパートの相続人が決まってから家賃を支払う」と主張したとしても、兄弟が賃料をもらう権利は遺産分割により「誰がアパートを取得することになるか」とは関係ないとされます。

    遺言書がない限り、収益物件は相続開始から遺産分割までの間は共同相続人の共有物と扱われてしまいます。その間に生じた不動産の賃料は遺産とは別個の財産であり、共同相続人が相続分に応じて取得することが可能です。

    今回のケースは家賃収入で生計をたてる長男にとって大きな負担になります。これまで長男がすべての管理を行っていたことを加味して金額の調整を行うことで、長男の負担を軽減できることもあるかもしれません。