第257回【生前対策】元気なうちに終活を始めることは
今後の備えにつながります。遺言書の作成や任意後見契約を行うことで
もしもの場合に備えましょう。
放送日:2023.3.23

  • 【リスナーからの相談】70代
    最近、「終活」という言葉をよく耳にするようになり私もそろそろ準備を、と考えています。まずは遺言書から手を付けるのが良いかと思い、書き始めたはいいものの、私には子どもがいません両親は既に亡くなっていて、兄と妹がいます。わたしは夫を早くに亡くし、妹の娘である姪っ子を娘のように可愛がってきました。反対に、兄とは疎遠です。今はどこで暮らしているのか分からないぐらいですから、兄には遺産を渡す気がありません。できれば、姪っ子に全財産を渡したいぐらいですが、そんなことできるのでしょうか?
  • 【回答】
    • ◆ポイント1:元気なうちに終活を始めることで、今後の備えに
      一人暮らしの御高齢の方にとって、元気なうちに終活を始めることは、今後の安心につながります。また「もしもの場合」、つまり怪我や病気で入院したり、認知症になったりした場合への希望がある際には、そのための手立てを具体的に、そして早めに準備しておくことがとても大切です。
    • ◆ポイント2:遺言書の作成と、あわせて遺言執行者を指定しておく
      相談者様の場合、もし何も準備をしないまま亡くなったときは、法定相続人である兄と妹 が財産を相続することになります。そのため姪っ子に財産を渡すには、遺言書にその意思を書く必要があります。通常、遺言書を残す場合は法定相続人の遺留分に配慮した方が良いのですが、兄弟姉妹に遺留分はありません。その点では、安心して姪っ子にすべての財産を渡すことができます。
      ただ法的な権利と人の感情は別問題です。そこで遺言をスムーズに実行するために、遺言書に遺言執行者を指定しておくことを、あわせておすすめします。 遺言書にはいくつか作成方法がありますが、多くの場合、自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかが選ばれています。
    • ◆ポイント3:任意後見契約を行い「もしもの場合」に備える
      相談者さまの場合、おひとりでお住まいとのことなので、認知症になったり病気やケガで入院したりといった場合のさまざまな手続きや財産管理、死後の事務手続きを誰に任せるか、も心配な点のひとつとして考えられるでしょう。これらのことには、遺言書の作成だけでは対応できません。

      そのため相談者様が元気なうちに、姪っ子と任意後見契約をすることも御検討ください。
      任意後見契約とは、認知症になった場合の財産管理や、介護や入院に関わる手続きなどを、信頼できる人(任意後見人と言います)に頼んでおく契約です。この契約により、介護や入院にかかる費用を口座から引き出すとき、姪が苦労することはなくなります。

      任意後見人の活動は、認知症になった時から亡くなるまでの期間だけです。ですから、認知症にならずに足腰が弱った場合や入院したときの財産管理、死亡後のさまざまな手続きには別の手立てが必要です。
      一般的に、任意後見契約に認知症にならないときの財産管理契約や、死後の事務を委任する契約を付け加えて、こうした事態にも対応できるようにしています。これらのことも姪と契約書を作成しておくと良いでしょう。任意後見契約は公正証書で契約書を作成しなければならないので、遺言書とあわせて公証人に作ってもらうと良いかもしれません。

      以上のように、相談者様の場合には遺言書と任意後見契約書の作成をおすすめします。しかし、その内容にはさまざまな検討事項があります。お早めに、専門家に相談された方が安心です。