第187回みなし相続財産放送日:2021.11.25

  • 問題:Aさんは生命保険に加入していました。Aさんの死亡により2000万円の生命保険金が支払われる場合、その生命保険金は、被相続人Aの遺産として、遺産分割協議の対象になるでしょうか。Aさんの家族は妻B、長男C、長女Dです。
    ─ 生命保険金が遺産分割協議の対象になるかという問題は、生命保険の契約者が、保険金受取人を誰にしていたかによって結論が異なります。
  • 契約者:A
    被保険者:A
    受取人:?
  • 保険金受取人として、特定の人(たとえば妻B)を指定していた場合
    遺産分割協議の対象になりません。
    生命保険金は保険金受取人に指定された妻Bの固有財産になります。
  • 【解説】
    受取人として妻Bなどが指定されていない場合であっても、特段の事情がなければ、相続人それぞれが、法定相続分の割合に応じた財産を取得したものと解されます(最高裁判例があります)。したがって、妻Bが生命保険金の2分の1相当額、長男C、長女Dがそれぞれ生命保険金の4分の1相当額を取得することになります。
  • 問題:生命保険金のように「被相続人が亡くなったことがきっかけで受け取る財産のこと」をなんという?
    ─ みなし相続財産
  • 【解説】
    みなし相続財産とは簡単に説明すると「被相続人が亡くなったことがきっかけで受け取る財産のこと」です。亡くなった人が持っていた財産ではなく、亡くなるタイミングで保険会社や勤務先から受け取ったりするものを「みなし相続財産」として考えるとわかりやすいかと思います。みなし相続財産は厳密に言うと財産ではありませんが、亡くなったことで財産となります。結果、税法上で相続財産とみなされます。そのため、みなし相続財産を相続すると、通常の遺産相続と同様に相続税が発生します。
  • 【応用】
    問題:Bさんの遺産は1600万円。また、生命保険に加入していて、生命保険金2,000万円の受取人を長男に指定していました。この場合、次男は1,600万円の法定相続分しか相続できない?
    ─ 生命保険の2,000万円分も取得できる場合もある。
  • 【解説】
    • 長男Yが保険金を含めて2800万円、次男Zが預金800万円しか取得できないというのは不公平に感じます。そこで生命保険金を特別受益として、相続財産に「持ち戻し」て算定する、という方法が考えられます。最高裁によれば、生命保険金を特定の相続人が取得した場合、その生命保険金は、原則として特別受益にあたらない、と判断されましたが、生命保険金を特定の相続人が取得した結果、相続人の間の不公平が著しいといえる特段の事情がある場合には、生命保険金は特別受益にあたるとしています。どのようなケースで特別受益になるのかについては、裁判所審判例等がいくつかあり、相続開始時の遺産総額と生命保険金額とを比較し、生命保険金額の割合が多いときに特別受益性を認めています。
    • 前記の例では、預金(遺産総額)1600万円、生命保険金2000万円であり、保険金額が遺産総額の125%にもなることからすれば、生命保険金の特別受益性が認められると考えます。