第134回広大な農地と食い違う主張放送日:2020.11.19

  • 【質問】
    先日父が亡くなり、相続が発生しました。相続人は、私と弟、妹の3人です。相続財産の中には、広大な農地があります。私は、先祖代々の土地を残したいのでそのまま農地としての形を継続して農業を続けたいと思っているのですが、弟は農地を分割して一部宅地にして、自分の自宅を建てたり賃貸アパートを建てたりして活用したいと主張。さらに、妹は、農地など価値がないのでさっさとすべて売ってしまって現金で3分の1ずつに分けたいと言います。このように、三者三様でまったく主張が食い違い、話し合いが進みません。どうしたら良いのでしょうか。
  • 【回答】
    農地などの不動産がある場合に、その処分方法について相続人に対立があって解消できない場合には、それ以上当人同士で話し合っても解決は難しいです。この場合には、弁護士に代理人になってもらって話し合いを継続するか、家庭裁判所で遺産分割調停をする必要があります。

    弁護士や調停委員会が間に入ることによって、お互いが主張するそれぞれの土地処分方法のメリットやデメリットを冷静に把握することができて、それまで頑なだった相続人らの態度も緩くなり、お互いに妥協できて解決できるケースがあります。

    ただ、それでもどうしても合意ができない場合には、遺産分割審判になってしまいます。遺産分割審判になると、必ずしも自分の希望する分割方法になるとは限りません。相続人同士の意見の対立が深い場合には、農地の全部売却による強制換価になってしまうこともあります。そうなると不動産は安くしか売れませんし、長男や次男の意図とは全く異なる結果になってしまうこともあるので、注意が必要です。遺産分割は、なるべく審判にせず、調停までの段階でお互いが合意をして自分達で解決する方がメリットが大きいです。

    農地などの不動産の処分方法についてのトラブルを事前に防ぎたい場合にも、やはり有効なのは遺言書の作成です。上記の事案でも、父親がきっちり農地の処分方法を定めて遺言書に記載しておけば、兄弟間で意見が合わずにトラブルになることもなかったのです。

    たとえば、父親としても先祖代々の土地を残すべきだと考えていたなら、全部を長男に取得させることとして、他の遺産を次男や三男に残すことにより争いを避けることができました。
    遺言書を作成する際に、農地の処分方法について家族会議を開いて子ども達全員の意見を聞き、兄弟全員が納得しやすい内容の遺言をするよう心がけることも、トラブル防止に効果的です。