第118回公正証書遺言の手順放送日:2020.07.30

  • 今週も、先週に引き続き遺言にまつわるお話です。先週は「自筆証書遺言」の書き方についてお話致しました。今回は、遺言書の有効性が確約される「公正証書遺言」の作成手順についてお教えします。
  • A.
    おさらいですが、「公正証書遺言」は公証人関与のもと作成する方法であるため、最も確実な遺言書です

    公正証書遺言を作る際には、まず遺言書作成に必要な書類を集めます。具体的に言うと遺言者が本人であることを証明する免許証等の本人確認書類と印鑑証明書・実印が必要となります。そして、公証役場と遺言書案の調整を重ねながら日程を決めて証人2人と公証役場へ向かい、公証人立会いのもと作成手続きが進められていきます。公証人手数料はこのときに現金で持参するようにします。

    公証役場との遺言書案の打合せが必要なので期間的には2週間〜1ヶ月程度の余裕はほしいところです。実は、この遺言書案の打合せが重要で、遺言書に記載する財産は正確なもので、かつ財産の特定が容易な内容でなければいけません。なので、不動産については登記簿謄本を、預金口座については通帳コピーを、またそれぞれの相続財産の価格を証明すべきもの(不動産であれば役所で取得する固定資産税評価証明書など)も要求されますので、ある程度の時間をかけて公証人と打合せを行っていきます。
    この遺言書案の作成が難しいようでしたら、専門家に相談して原案作成から必要書類集め、公証人との調整までをお願いしてしまった方が確実でいいでしょう。
  • 公正証書遺言の作成の流れ
    ①証人2人以上が立ち合い、公証人から本人確認、質問等を受ける。
    ②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝える。
    ③公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせる。
    ④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認し、各自これに署名押印。
    ⑤公証人が、民法969条の方法に従い真正に作成された旨を付記し、署名押印。

    以上が公正証書遺言の作成の流れです。
  • 実務では代理人(司法書士や行政書士)があらかじめ遺言作成者の話を聞いておき、その趣旨に沿って遺言の文案を作成し前もって公証人と打ち合わせをしているため、よりスムーズに進むため遺言作成者の手間や負担は少ないです。

    なお、遺言作成者が病気等で署名が出来ない場合は公証人が、その旨を付記し署名に代えることができます(民法969条4号)。ただし証人は必ず自分で署名をする必要があります。また自身で喋ることが出来ない方は公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して口述に代える必要があります(民法969条の2第3項)。遺言作成者が病気等で公証役場に行けない場合は公証人が自宅、病院、老人ホーム等まで来てくれます。ただし、別途手数料や日当、交通費が発生します。
  • 【まとめ】
    公正証書遺言のポイント
    ◎遺言の中で最も確実な遺言の方法です。
    ◎作成するために証人2人を用意しなければならない。
    ◎公証人が作るため無効は考えにくいが打ち合わせに手間と公証人費用がかかる。
    ◎家裁に検認手続きが不要なので死亡後すぐに執行できる。
    ◎原本が公証役場に保管されるため紛失や書き換えられる恐れがない。