第124回債権の相続、遺言書のスキャンデータ放送日:2020.09.10

  • 父の貸したお金
  • 【質問】
    父が5年前に亡くなり、父の遺産を相続しました。先日ふと父の手帳を開いてみると、中から封筒が。見てみると、中には父の友人が書いた借用書が入っていました。借用日は2010年12月で、1年後に100万円を一括返済すると書かれていました。友人は「借りたのは何年も前だし、もう時効だ」と主張し返す気がないようです。返してもらうことはできないのでしょうか。
  • 【回答】
    返してもらうことができる

    息子さんは亡くなったお父さんの相続人なので、お父さんが知人に貸していた100万円の返還請求権も相続したことになります。では、この賃金返還請求権について、消滅時効が完成しているのでしょうか。消滅時効とは、債権者が一定期間、権利を行使しないことによって債権が消滅する制度を言います。つまり、権利の上に眠る者は保護されません。
    個人間の賃金債権の消滅時効の場合、民法には「権利を行使することができる時から10年」で時効が完成すると定められています。この権利を行使できる時とは、お金を貸した日ではなく、返済期のことを言います。今回、お金を借りている知人の返済期は2011年12月だったので、まだそれから10年は経過していません。したがって、消滅時効は完成しておらず、相続人の息子さんがお父さんの代わりに返してもらえるということになります。
    この消滅時効に関しては、今年の4月1日から施行される改正民法にともない、「職業別短期消滅時効」が廃止されます。「職業別短期消滅時効」とは、職業別の時効期間が定められたもので、飲食料、宿泊料などが1年、弁護士の報酬が2年、医師の診療報酬が3年などとなっていました。しかし、複雑でわかりにくいので、すべて廃止になりました。また、商取引の場合に定められていた5年の商事時効についても廃止にし、職業別でバラバラだった時効期間を1つにまとめることにしました。時効期間と起算点については、これまでの「権利を行使することができる時から10年」という時効期間を維持しながら、新たに「権利を行使することができることを知った時から5年」という時効期間が追加されました。これにより、いずれか早い方の経過によって時効が完成することになります。
    ただし、4月1日より前に締結した契約については、改正前の時効期間が適用されます。改正民法が適用されるのは、あくまで4月1日以降に締結した契約に限られるので、その点はご注意ください。
  • 遺言書のスキャンデータ
  • 【質問】
    先日夫が亡くなりました、遺言書がないかと思い当たる場所を隈なく探しましたが、見つかりません。すると、生前仲の良かった友人が「実は、誰にも見られないよう持っていて欲しいと言われ、保管していたのだが紛失してしまった。」と申し出てきました。ところが、「スキャンデータでよければ、ある」とのこと。友人は紛失したときに困らないように、こっそりスキャンしたデータをパソコンに残していました、この遺言書は有効になりますよね?
  • 【回答】
    スキャンしたものは、遺言書としては無効

    おさらいですが、遺言については、民法で方式が決められており、それどおりに作成しなければ無効となります。①日付と署名を自分で書いて、②押印も必要です。この方式を満たしていないと無効になります。今回の相談内容に出てくる遺言は、「自筆証書遺言」にあたります。これは本人が自書したものしか遺言書として認められず、スキャンした複製物では、遺言としての効力は認められないと考えます。

    「自筆証書遺言」の原本を紛失しないために「法務局における自筆証書遺言の保管制度」という制度があります。これは、一部の法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度です。遺言書を誰にも分からないように保管していると、秘密は守られますが、どこに保管していたのか分からなくなってしまったり、今回のように紛失してしまう可能性がありますが、それを防ぐことができます。また、預かる際には、③遺言の方式が法律に適合しているか、などの確認をしてくれるので、方式の間違いによって無効になるのも防げますいったん預けた後も、保管の申請を撤回することができます。遺言者が死亡するまでの間は、遺言者しか閲覧できませんので、遺言者が亡くなった後、遺族などは、自分が関わる遺言書があるかを法務局に問い合わせます。そして、遺言書があれば、その画像データを確認したり、その画像データを用いた証明書をもらうことができます。ただし、遺言者が亡くなっても、自動的に相続人に通知がくるわけではなく、相続人から法務局に問い合わせをする必要があります。なので、法務局に遺言を預けた場合は、そのことを親族や近しい人に伝えておくとよいでしょう。
    他にもメリットとして、自筆証書遺言は、相続発生後に、家庭裁判所の「検認」という手続をとる必要がありますが、法務局に保管される遺言書については、それが不要になります。保管してもらうのに、手数料はかかりますが、紛失のリスクがなくなるなど、自筆証書遺言を使いやすくする制度といえるでしょう。