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トップ絹川代表 石川の文化人と語る>2008年2月 鈴木治男さん
 

絹川代表 石川の文化人と語る

鈴木 治男さん 画家

聞き手●絹川グループ代表取締役社長 絹川善信

自然に湧き出る絵画をもとめて

−心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく描く−

「バロック音楽から生まれる熱い抽象」

絹川 ● 先生は茨城のご出身と伺いましたが、石川へはどんなご縁があって来られたのですか?

鈴木 ● 画家になる為に金沢美術工芸大学へ入学したのがきっかけです。高校卒業後、一度大手の機械製造メーカーへ就職しました。ですが、画家になる夢を諦めきれず、三年半勤めた後に会社を辞めました。半年間浪人して勉強し、金沢美術工芸大学を受験しました。

絹川 ● 画家への第一歩は石川から始まったのですね。絵を拝見させて頂いたところ、先生は抽象画を描かれていらっしゃるのですね。

鈴木 ● 抽象画の中でも、大別して「冷たい抽象」と「熱い抽象」と言われる二つの方向があります。「冷たい抽象」というのは数学的・幾何学的な秩序感など、一つのシステムを作ってその中で展開していくようなものを言い、「熱い抽象」というのは表現的と言いますか、自分の気持ちをぶつけていくような感じのもので、画面も熱帯びたものになっていきます。私の抽象画はどちらかといえば「熱い抽象」のタイプです。

絹川 ● 一言に抽象画と言っても、さまざまな種類があるのですね。絵を描くときは、最初にイメージを作ってから描いていくのですか?

鈴木 ● 最初にイメージがあって描く場合もありますが、多くの場合は落書きをたくさん描いていく中でイメージを膨らましていきます。落書きを描いていきながら、自分の過去の連想などからシンクロするものを見つけていきます。確信が持てるものができるまで落書きをして、ある程度方向性が定まってきたら次に小さいサイズでアクリル絵の具などを使ってエスキースを描いていきます。大きなキャンバスに描くまでの助走のような感じですね。

絹川 ● 一枚の絵を仕上げるのにどのくらいの期間がかかりますか?

鈴木 ● 1〜2ヶ月ほどかかります。私は、絵を描きながらと同時に探究していきます。例えば、工芸などは出来上がりのイメージを明確に持って作品を作りますが、私の場合は最初からきちんとしたイメージを頭に浮かべているのではなく、描いていく作業の中で偶然生まれた絵の具のしたたりなど、面白い要素があればそれを途中に取り込みながら進めていっています。

絹川 ● 毎回面白い作品が生まれそうですね。絵を描く前に行っていることはありますか?

鈴木 ● クラシックを聞くことです。音楽を聴きながら、一度無の状態を作り、絵を描くモードへと切り替えます。バロック音楽、特にバッハをよく聴きます。

「自然から学ぶ共生の世界」

絹川 ● 昨年には小松市で個展を開かれたそうですね。

鈴木 ● 昨年還暦を迎え、その記念に5月に60回目の個展を開きました。60歳を機会に、画業を第一期の「習作期」、第二期の「模索期」、第三期の「共生の森シリーズ」の三期に分けて、60点の作品を展示したのです。

絹川 ● 60点の作品を展示とは凄いですね。第三期の「共生の森シリーズ」は、何かきっかけがあって描き始めたものなのですか?

鈴木 ● 11年ほど前に小松市にある今のアトリエへと転居したことがきっかけです。今の所へ来る前は街中に住んでおり、自然にふれる機会がほとんどありませんでした。引っ越したところはすぐ近くに自然があり、家の周りを散歩したときには鳥の声が聞こえてきます。目の前に広がる里山の四季の移り変わりや、そして晴れた日には白山が綺麗に見えたりと、自然にふれる機会が多くなりました。そういった自然との対話の中から、「共生の森」というテーマを見つけることができたのです。

2001年「鳥たちの森」
現代美術館展最高賞

1985年
「憧れて」

1997年
「春告げ鳥のくる朝」

2006年
「冬」

「抽象画は感性の調和」

絹川 ● 抽象画は具象画とはまた違う難しさがあると思うのですが、絵を描いていく中で大切にしていることはありますか?

鈴木 ● 造形的なバランスや、色彩の調和を一番大切にしています。色と色との関係や、形と形の関係など、常に画面の全体を把握します。次の一筆を前に描いた画面とどういう風に繋げていくか頭の中で置き換え、全体のバランスを考えて進めていくようにしています。

絹川 ● 絵を描くときにはどんなところを意識していますか?

鈴木 ● 具象的な顔や形ではない、自分の気分や精神的なものが色や線になって表れているかということです。私は常に絵が動いていてほしいと思っています。絵の中に精神や魂としか名付けようのないものが息づいていてほしいのです。中国に古くから伝わる「気韻生動」という言葉のように、画面が呼吸しているように感じてほしいです。

絹川 ● 絵を通してどんなことを表現していきたいですか?

鈴木 ● 自分が生きている「今の時代」です。今この時代に生きているのですから、今という時代を自分の体全体で感じて、色や形で表現していきたいと思っています 。これには1950年以降のアメリカ美術の影響もあります。アメリカ美術は「今」を一番大事にしています。過去の素晴らしいセンスで描かれた作品はたくさんありますが、それはあくまでも参考資料でしかありません。真似してその作品に近づけようと努力して、一生を送るのはもったいないと思うのです。

2004年
「共生の森一蒼穹」

1985年「囚われて」
セントラル絵画大賞展

「絵を描くは、心を描くこと」

絹川 ● 今後はどのように活動されていきたいですか?

鈴木 ● 新鮮な構図、面白い構図を求めて、誰も描いたことのない構図を描いていきたいと思っています。色々な画家がいて、今まで成し遂げられたことをふまえた上で、何か新しい事を自分で付け加えられないだろうかと考えています。今の時代、平面にこだわって絵を描いていることが時代遅れになってるんじゃないか、コンピューターで作られている動画などのほうが今からの時代に合っているのではないかという考えが心の隅にきざすときがあります。そうは言っても、私ももう60歳ですから、今からコンピューターを用いて新たな作品を作るということも出来ません。ですから、これからは自分の世代で出来ることをこつこつと極めていきたいと思っています。その極めるというのは、必ずしも技術的に上手くなるということではなく、自分の精神的な自由さというものをできるだけ描きたいということです。例えるなら、修行する僧のように絵を描いていきたいです。もっと絵が売れるようになりたいとか、たくさんの人から共感を得たいという俗念というものは捨てられません。ですが、絵に人生を託す者としては、絵を通して自分自身を高めていきたいと思っています。

1987年「二人」

1997年「降りてくる雲」

※気韻生動…中国画の理想で、画かれた対象が生き生きとして見えること。5世紀末の南斉の画論家謝赫(しゃかく)が、「画の六法(ろっぽう)」の第一にあげる。

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