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絹川グループ
トップ絹川代表 石川の文化人と語る>2007年12月 法邑利博さん
 

絹川代表 石川の文化人と語る

法邑 利博さん 二紀会会員 油絵画家/加賀友禅作家

聞き手●絹川グループ代表取締役社長 絹川善信

モチーフに画材は選ばない

−目に見えていた世界を呼びさます案内人−

「絵画と工芸の融合」

絹川 ● 現在、法邑さんは油絵画家・加賀友禅作家としてご活躍されていると伺いました。油絵を描き始めたきっかけや加賀友禅の道へ入ったきっかけは何だったのでしょうか?

法邑 ● 子供の頃から絵や工作が大好きでした。中学生の頃から自宅では静物、野外では風景のスケッチを鉛筆で日常的に描いていたので、社会人になり油絵を描くのはごく自然な成り行きでした。25歳のときに二紀会に入会するまではサラリーマンをしていました。しかし絵と仕事の勉強を両立するのは難しく、どちらか一方を勉強することで両方に役立つことはないかと考えました。そこで、筆の仕事ならどちらにも活かすことができると思い、会社を辞めて加賀友禅作家の中町先生に弟子入りして絵付けの仕事を始めました。

絹川 ● 加賀友禅の仕事を通じて得たものは何でしょう?

法邑 ● 装飾性・デザイン性・象徴性を理解できました。絵画と工芸のそれぞれの特徴を同一画面に抵抗なく表現することで、自分の作品に個性や特徴を持つことができたと思います。

絹川 ● 絵は独学で勉強されたそうですね。

法邑 ● 独学なので失敗も多かったですが、おかげで自分の表現を磨くことができました。自己流にならないように理論的な本もたくさん読み、プロ・アマチュア・障害者の方が描いた絵など、様々なジャンルの絵を見てきました。二紀会に入ってよかったと思うのは、色んな人の絵を見て自分の特徴や個性を発見できたことです。自分一人では、自己を見つけるのはなかなか難しいです。

第49回二紀展「森羅万象」
安田火災美術財団奨励賞

第60回記念二紀展「空の杜」

第61回二紀展「空の杜-2007星宙」

「幼い頃に感じた幻想の世界」

絹川 ● 絵を描くときはどんなところを意識していますか?

法邑 ● ごく普通のものを普通でない表現をしたいと思っているので、デザイン性は意識しています。画面の中に抽象性を持たせることで、不思議さを出したいです。

絹川 ● 法邑さんの作品は幻想的でとても面白いです。絵のイメージはどこから湧いてきますか?

法邑 ● 金沢で育った子供の頃の思い出からイメージすることが多いです。子供の頃は少し家から離れると日中でも薄暗いところがたくさんあり、ここに何か住んでいるのではないか?と思う不思議な場所がたくさんありました。夜になると町全体が真っ暗になり、子供心に暗闇は恐ろしいものでしたが、闇をじっと見ていると何かの形に見えてきたり、そこに幻想的な世界が実在している気がして想像力をかきたてられました。そんな不思議な思い出の欠片が何かの瞬間に繋がり一枚の絵になっていきます。

絹川 ● 法邑さんの作品は日本的なものから西洋的なものまで表現が幅広いです。他にも抽象画を描かれたり、陶芸、ガラス絵、銅版なども作られているそうですね。

法邑 ● 人間は色んな顔を持っています。一人の人間が表現するときに、一つの様式に決めてしまう必要はありません。人間には様々な心があるので、色んな心を素直に表現したいです。だからモチーフや表現方法にこだわりはありません。大切なのは精神性で、根幹がぶれなければ、どんなものを使ってもその人の世界観が表現できると思っています。抽象画を描くのは、色や形の美しさ、バランスの勉強のためです。陶芸や銅版画も制作しています。とにかく自分でできることは何でもやってみたいと思っています。

絹川 ● 法邑さんの精神性として根幹にあるものとは何でしょうか?

法邑 ● 「金沢の風土」と「自分の精神性」です。この二つが合わさって絵になります。借りものではなく、自分が育ってきたものを表現することが強みでもありますね。

絹川 ● どの作品もとても色が綺麗ですが、色へのこだわりなどはあるのでしょうか?

法邑 ● 色のハーモニーにはとてもこだわっています。本来汚い色はないのです。色が汚く見えるのはハーモニーの問題で、どんな色も真っ白なキャンバスに一つ塗ると実に美しく輝きます。原色をたくさん塗っても美しい絵にはなりません。

絹川 ● 絵を描くときに一番時間をかけるところはどこですか?

法邑 ● 地塗りと下塗りですね。深い味のある色彩を出すために何層にも絵具を塗り重ね、乾くのを待って描きこみます。色を大事にしたいので、制作するときは混色はなるべく少なくするようにしています。あとは、背景にも時間をかけています。背景は自分のイメージを表せるので好きです。背景を勉強するために、二紀会に入りたてのころは壁のシミをよくスケッチしました。風雨などで自然に作られた壁は美しく、色々な場所へ出かけてはアパートの壁や塀をスケッチブックに何冊も描いていました。で、どんな色も真っ白なキャンバスに一つ塗ると実に美しく輝きます。原色をたくさん塗っても美しい絵にはなりません。

絹川 ● 法邑さんのスケッチを拝見しましたが、一本の線だけで花の細部までとても正確に描かれていて素晴らしいです。スケッチをするときに注意するところはどこでしょう?

法邑 ● ものをよく見ることが絵の基本だと思っているので、スケッチはたくさん描いています。スケッチするときは、実物より大きく描くように気をつけています。大きく描く場合、じっくり観察しないといけないので、虫眼鏡を使います。色んなことが発見できて面白いですよ。あとは、対象物に先入観を持たないことです。例えば、花を描くときは生まれて初めてこの花を見たという気持ちで描きます。興味を持ってみると、花はとても美しいです。絵を描く時も同じで、惰性では絵を描きません。

「空の人」

「フローラ」

「天空からの音」

「そのときの「心」を大切に」

絹川 ● 法邑さんが絵を描いていて楽しいときはどんなときですか?

法邑 ● 心のありようが画面にうまく表現できたときです。今は技術より画格の高まりに喜びを感じます。

絹川 ● 絵を通して表現したいものは何でしょうか?

法邑 ● 私の絵に共通しているテーマは「天からの恵み」です。美味しい水も、甘い果実も、美しい花も天からのめぐみであり、我々は自の力では何一つ得ることができません。目には見えないけれど、天に用意されているものへの感謝を表現したいと思っています。見る人には、言葉のない音楽が耳を通して人々に感動を与えるように、何を言いたいのか理解できなくても色彩・形を通して「色が好きだ」「何だか面白い」と共感して頂ければ嬉しいです。

絹川 ● 最後になりましたが、今後の抱負などはありましたら教えて下さい。

法邑 ● そのときそのときの自分の想い、心のありようを描いていきたいです。常に絵は描いていきますが、次の絵が自分でもどんな風になるか分かりません。それが楽しみなのです。

「アトリエの仲間たち」(水彩)

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