絹川代表 石川の文化人と語る
林 信子さん ステンドグラス作家
暮らしを彩るガラスの輝き
−素朴な光の美しさを伝えたい−
「ガラスとの対話」
絹川 ● 林さんは卯辰山工芸工房でガラスの勉強をされたそうですが、ステンドグラスに興味を持つきっかけをお聞かせ下さい。
林 ● 三十年程前、ガラス開発の会社に入り、ステンドグラスのデザインの仕事をしたことがきっかけです。光を通したときのガラスの透明感にとても感動しました。結婚して、会社を辞めてからしばらくは日本画を描いていました。でも、ステンドグラスを作っていたときの楽しさや、ガラスの美しい透明感を忘れることができず、本格的にガラスの勉強をしたくて金沢へ出て行きました。
絹川 ● 林さんは作品を作るだけではなくて、生活の中にもステンドグラスの光を取り入れておられるのですね。
林 ● 私の家では四季や気分に合わせて部屋に置くランプや照明を変えています。 また、書院の格子にステンドグラスのパネルをはめたり、廊下にダルというガラスブロックで作ったフィックスを使ったりして、光を感じられる空間を意識しています。生活の中でガラスのインテリアを使っているところが皆さんは面白いと思われるのか、お客さんの要望もあって自宅で2回ほど個展をさせて頂きました。
絹川 ● 作品の発想はどこから生まれますか?
林 ● 和のものや自然からイメージをもらいます。自分が住んでいる環境から影響を受けることが多いですね。
絹川 ● 実生活で使うことを考えて、ステンドグラスを作るときにはどんな点に注意しているのでしょうか?
林 ● ガラスにも色々な種類があるので、作品を作るときは和に向く雰囲気のガラスや、斬新な洋風に向くガラスなど、置きたい場所によってガラスを使い分けるようにしています。あとは、作品と空間のバランスを見極めデザインや大きさを考えるようにしています。
絹川 ● 作品によってガラスを使い分けるのはなかなか難しそうですね。

「孔雀図」:ステンドグラスパネル
林 ● ステンドグラスは使うガラスの素材感によって、光を通したときの雰囲気が全く変わってしまうので、ガラスを選ぶときは光を通したときの色やガラスの質感を考えながら集めます。どうすれば、それぞれのガラスの良さを最大限に引き出せるかいつも悩みます。でも、ガラスの個性を活かして一つの作品にまとめることがステンドグラスの難しさでもあり、作る魅力だと感じています。
「素材としての雪」
絹川 ● 林さんは雪のシリーズを作っておられるそうですね。雪の作品は、パートドヴェールという技法で作られているそうですが、どのような技法になるのでしょうか?
林 ● パートドヴェールは焼物と似た技法です。粉末にしたガラスの粒子を窯に入れて焼き上げると、独特の風合いを持ったガラスができます。
絹川 ● 雪の作品を作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
林 ● パートドヴェールの作業の中に自分の白さを見つけたことがきっかけです。ガラスは止める温度によって、ガラスが溶けたときの表情が違います。それが雪の表情の変化と重なって面白いと感じました。1月の雪、2月の雪、朝の雪、夜の雪では、同じ雪でも日や時間によって全く表情が違いますよね。パートドヴェールならそんな雪の表情を表現できると思いました。パートドヴェールは窯さえあれば自分でも作れるので、色々楽しめそうだなと思い、雪をテーマにした作品を作り始めました。
絹川 ● パートドヴェールのガラスには、どんな種類を使っているのでしょうか?


「あけびの花」:自宅近くの山を歩いていたときに、偶然見かけたあけびの花の鮮やかな赤色に感動して作った作品。現在は、林さん宅のキッチンの証明として使われています。柔らかく優しい光が印象的でした。
林 ● ソーダガラス(窓ガラス)を使っています。クリスタルガラスで作品を作ったこともありますが、白色が綺麗すぎました。もう一味欲しいときに、ソーダガラスの場合は水を感じさせるような白さがあります。ソーダガラスは、グレーがかった白色をしていて、一見地味なガラスです。しかし、焼成するとその鈍さがなくなり、水を感じさせるような透明感が生まれます。そこが、ソーダガラスの魅力です。
絹川 ● 林さんは雪の科学館主催の『雪のデザイン賞』にもいくつか作品を出展されていますよね。一つの作品を作るのにどのくらい時間がかかるものなのでしょうか?

「雪の館」2002年雪のデザイン賞 佳作
林 ● 雪の作品は、デザインを決めて電気炉でガラスを焼くことから始めるので、一つの作品を仕上げるのには二、三ヶ月ほどかかります。パートドヴェールはたっぷり時間がないと集中できません。雪が降る12月後半から2月は自分だけの期間だと思い、雪のシリーズを中心にして作品を作っています。
絹川 ● 林さんがパートドヴェールと雪にこだわる理由は何でしょうか?
林 ● 花があるから花を生けるように、私は雪という素材があるから雪で遊びます。子供の頃よくした雪遊びの延長のようなものかもしれません。
絹川 ● 雪のシリーズでは、見ている人に何を感じて欲しいと思っていますか?
林 ● 見ている人には雪の温かい白さや、雪をモチーフにした神秘的な世界を楽しんで頂ければ嬉しいです。

「雪化粧」2000年雪のデザイン賞 入選

「シンホニー」2000年雪のデザイン賞 入選

「朝の舞踏会」2000年雪のデザイン賞 入選

「雪華燈」
「暮らしのなかにもっと光を」
絹川 ● 林さんが作品を通して伝えたいことや、今後の抱負などありましたらお聞かせ下さい。
林 ● 難しく考えないで、純粋に心を癒されるもの、光を楽しむものとして、ステンドグラスが生活の中に溶け込んでくれたら嬉しいです。蛍光灯の光だけでは寂しく感じるので、家に一部屋だけでも灯りを楽しめる部屋があれば素敵だと思います。色んな照明を楽しんで欲しいですね。これからも、雪のシリーズは作り続けて行きたいです。新しいジャンルとしては、日本の色を意識した作品に挑戦してみたいと思います。
絹川 ● 今回、林さんの作品に触れ、改めてステンドグラスの魅力を感じました。今後とも、林さんらしい遊び心のある作品を作り続けて下さい。本日はお忙しい中ありがとうございました。

「さくら」

「早春の美女」
林 信子
【アトリエ五伯山】
〒922s−0823 石川県加賀市黒瀬町ホ65甲
「教室作品展示会 兼 個展」 開催:平成19年10月12日〜17日迄
TEL:0761−72−0094
FAX:0761−72−5560
