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絹川代表 石川の文化人と語る

毎田 健治さん 加賀友禅作家

聞き手●絹川グループ代表取締役社長 絹川善信

千紫萬紅の言葉の意を噛み締め、父から受け継いだ
技術と物づくりの心を大切にしていきたい

 

「一貫性のある加賀友禅作家への道」

絹川 ● 早速ではございますが、毎田さんが友禅を始められたきっかけを教えてください。

毎田 ● 父が友禅をしていましたので、その影響が一番大きかったんだと思います。

絹川 ● お父様は加賀友禅作家の毎田仁郎さんですね。

毎田 ● そうです。父は体があまり丈夫な方ではなかったので、何か手に職が持てればと思い京都の工房に弟子入りをしました。その後、戦争の疎開で金沢に戻ってきました。

絹川 ● お父様の跡を継がれた訳ですが、この世界に入ることに迷いなどはありませんでしたか?

毎田 ● 高校を卒業する時に実は最初は違う道を目指していたんですが、手に覚えたそのものが出てくる職業なので、一生懸命真剣に学べば何とか自分のものにしていけるだろうと父から教えられました。せっかく父が始めた仕事で、絵を描く事が好きだったので父の跡を継ぐのも悪くないのではないかと思ったんです。
仕事をするためには基礎が大事ですので、写生的なものを学ぶために金沢美術工芸大学の日本画に進みました。大学を卒業してから父親の弟子になって加賀友禅を始めたんです。 私が大学を卒業した頃は、石川県では木村雨山先生も含めて職人さんは40人ぐらいだったんです。当時は「加賀友禅作家」という呼び方はなくて、生業として着物を作っていた方が多くいらっしゃいました。そういった意味では本当の職人ですよね。

絹川 ● 本来の友禅というのは、デザインしたものを職人自身が描くというのが友禅であり、現在のような極端な分業ではなかったように思います。昨今では型紙を作って絵付けをしている絵付師が友禅作家と呼ばれていることが多いのではないでしょうか。

毎田 ● 確かにそういうところもあるのかもしれません。それは本当の職人が減ってきたということかもしれませんね。

絹川 ● 今は毎田さんのように、ご自身の工房で一から着物を作っていらっしゃる方は少ないように感じますが。

毎田 ● 一つの物に一貫性を持たせることは、父からのやり方なんです。 今は分業化が進んで、地染めや糊置きを知らない作家さんが多くなって、悪い言い方をすれば商業的なペースになってしまいました。バブルの時代は、私のところは他の人から見たら馬鹿だなとよく言われたくらい、非能率的で非効率的でした。しかし私達はずっと一貫した物を作っていく、そうやって一つ一つの物に気持ちを込めて作るのが、本当の物づくりだと思っています。

友禅訪問着「遥延」

友禅訪問着「あすなろ」

「物づくりへのこだわり」

毎田 ● 「千紫萬紅(せんしばんこう)」という言葉があるんですが、これは紫も赤も幾千幾万通りの色があり、色彩の世界はとても奥が深く、持っている色も人によって全部違う色になるという意味です。いつも新しい気持ちで仕事が出来るように、自分を磨くことを絶えず忘れないようにと戒める意味でもあるんです。 なぜこだわって自分の工房で仕事をしているかと言うと、人に任せてしまうと絶対に自分のイメージ通りにならないので、それがもどかしいからなんです。人それぞれ色の捉え方も、物の書き方も違いますから、なるべく自分の目の行き届く範囲で仕事がしたいという想いがあるんです。何より、自分の作っている物がイメージ通り形に仕上がることです。

絹川 ● なるほど。では逆に仕事をされていて辛いと感じることはありますか?

毎田 ● やはりイメージ通りにできなかった時は辛いですね。デザインの下描きを描いて、原寸大の大きさにしてから下絵を描いていくのですが、途中からなぜもっと始めに気付かなかったのかと思う失敗もあります。でもこういうことを積み重ねて、その中で少しずつ成長していくんだと思っています。幾つになっても生涯勉強ですね。

「平面と立体の両方の美」

絹川 ● 毎田さんは石川県立音楽堂邦楽ホールの緞帳(どんちょう)も制作されたと伺いました。

毎田 ● これは時間が掛かりましたね。制作日数は延べ約1年、1000人ほどで作ったことになります。私も緞帳のような大きな物を作るのは初めてでした。このお仕事を頂いたのも、私の工房では下絵から一貫して作業ができるということでお声をかけて頂いたんです。

絹川 ● それは大変なお仕事ですね。しかし、毎田さんのように全てを任せられるところでないと、これだけの物は作れなかったのではないかと思います。 着物は一枚作るのにお時間はどのくらいかかりますか?

毎田 ● 物によって違いますが、紋付などで大体3ヶ月くらいです。展覧会やコンペみたいなものだと、構想から作っていくので半年からそれ以上かかることもあります。

絹川 ● 構想に時間がかかるのですね。毎田さんのデザインの発想の源になっているものは何でしょうか?

毎田 ● 現在の心情と感動、以前からのスケッチや記録などを元にデザインを考えることが主です。「遥光」というイチョウの柄の着物も、以前から模様として何かに使えないかとずっと温めていたものです。

絹川 ● 着物は広げて見たときにいいなと思っても、着ると全然違う雰囲気になることがありますね。

毎田 ● 着物は平面と立体と両方の美を兼ね備えないといけないので、そこが着物の難しさなんです。

絹川 ● 京友禅は艶やかで派手な感じですが、加賀友禅は素朴な感じがします。これはどういったことが関係あるのでしょうか?

毎田 ● 土壌が京都の公家文化と、金沢の武家文化と二つの違う流れがありますから、その違いが大きいのかもしれません。 私が美大を卒業してこの道に入った頃に京都で展示会があったんですが、作り手はなかなか入れてもらえないので、友禅関係のいろんな人にお願いしてやっとの思いで裏側から見せてもらっていました。カメラなどは持ち込めなく、見たものを頭の中で覚えて外に出て鉛筆で書いていくのが関の山でした。そうやって私たちは勉強してきました。それくらい京都が主導の時代だったんです。

絹川 ● 最後になりましたが、毎田さんの今後の抱負や夢などお聞かせ下さい。

毎田 ● 一日でも長く元気にこの仕事を続けて、先住の方たちから受け継いだ伝統工芸を次の世代にも絶やさず繋げていきたいです。時代は変わっても、物づくりの心や人間の本質を大事にしていきたいと思っています。

絹川 ● 友禅は海外に誇れる素晴らしい日本独自の伝統工芸だと思います。物づくりの一途さを大切にしていきたいですね。 これからもご活躍をご祈念しております。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。

加賀友禅緞帳「瑞松彩華」石川県立音楽堂

工房に展示されている友禅訪問着「遥光」

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